映画『ジョーカー』について

ある一人の男がジョーカーと呼ばれる怪人になるまでの物語、 というのが、映画『ジョーカー』のあらすじだ。この映画は「 本当の悪を見る覚悟はあるか」などと煽る、 うんざりするような広告が打たれている。だが『ジョーカー』 は悪についての話ではない。正義についての話でもない。 そういった意味で、「本当の悪」を見ることはできない。

 

後にジョーカーとなるアーサーは不幸まみれだ。 まるで不幸のごみ箱のように、 アーサーという人間に誰もが不幸をぶち込んでいく。 ぶち込み続けられた不幸が臨界点を超えたとき、 ついに彼はジョーカーに変貌するわけだが、 むしろよく耐えたと思う。

 

アーサーはまともな人間になろうと努力した。夢を持ち、 明るく振舞おうとした。 それはアーサー自身が望んだことでもあった。 だが彼の努力は実ることはない。なぶられ続ける。 はじき出される。彼という存在を、 危ういところでなんとか支えていたものはあっさりと消滅する。 彼の求めに応えるものはない。すべてから、彼は拒絶された。 そのすべてのなかには自分自身も含まれる。  彼はもうアーサーでいることはできない。

 

そうしてどこにもいない自分を一から立ち上げなければならなくな った時、手掛かりになるのは自分の肉体だ。 笑うことを宿命づけられた彼の肉体こそが出発点になる。 新しい自分を立ち上げるにあたって、かつて自分を苦しめた、 こうあるべき、 というまともな人間のための規範はなんの意味ももたない。ネガティブもなければポジティブもない。不幸も幸福もない。 それらの区別はなく、渾然一体として彼の外にある。 そこはたったひとりの、自分だけの世界だ。 すべてを笑う彼にとって、目に映るものすべてが喜劇だ。 彼の前に立つ者は喜劇役者であることを強制される。 そこに現れるのは、演じるものと観るものという関係性だ。 その関係性のなかで、はじめてジョーカーは、 これこそが自分だという姿を手にする。

 

もうジョーカーを笑うものはいない。 舞台の上で繰り広げられる喜劇の、 ジョーカーはたった一人の観客なのだから。

森の中の公衆便所に陳列されていたもの

 

小学生の頃、とにかく歩くのが好きだった。仲がよかった友人と一緒に(時には友人が飼っていたた柴犬も)、近くの山を歩き回っていた。舗装された道だったり、獣道だったり。住んでた場所が山だらけだったので歩く場所には困らなかった。

 

ある時、友人といっしょに市民の森を歩いた。そこは普段はあまり立ち入らない道で、割と長いコースだった。車が一台くらい通れるくらいの幅に舗装されていて、その脇は木が繁っていた。人通りはほとんどなく、たまに車が通過するくらいだった。誰もいない長い道というのは小学生にしてみれば冒険みたいなもの。水筒やエアガンを装備してでかけた。

 

そのコースは途中に野犬のでる場所があった。三匹くらいの群れが吠えかけてきて、彼らの縄張りを出るまで森の中をついてきた。たまに道路の上にいることもあっけど、運がいいことに噛まれたことはない。ちなみに友人の柴犬は極度のビビりだったのでまったく役に立たなかった。

 

ここからが本題。その市民の森コースは、途中にいくつかのトイレが設置されていた。そのコースを歩く人が草むらにしゃがまなくていいように。ブロック塀とコンクリートの粗末な造りだけど、ないよりましだ。あるトイレの前を通りかかると車がとまっていた。人通りが少ない道とはいえ運転に疲れた人が休憩することはあるだろう。

 

俺は小便がしたかったのでそのトイレに入った。すぐに何かおかしいことに気付いた。小便器の上の荷物置きや、大便器のタンクの上にアダルトグッズが並べられていた。エロ本(実写)だったり、オナホールだったり。俺は大喜びで外にいる友人を呼びに行き、中を確認してきた友人とキャアキャア言いながら盛り上がった。小学生だったのでこれほど高次のアダルトグッズに接する機会はなかった。

 

だけど、だ。よく考えると市民の森のトイレに高次アダルトグッズが陳列されているこの状況は何かおかしい。そこではじめて俺たちは恐ろしさを感じた。楽しい気分は吹き飛んだ。何かおかしな事態が持ち上がっているのではないか…。これはヤバい大人の世界だと思った。俺と友達はトイレから走って逃げた。

 

きっとトイレの前にとめてあった車だ。運転席におじさんが座っていた。あいつの仕業に違いない。俺たちはうっかりアダルトグッズの闇取引の現場に足を踏み入れてしまったんだ。見てしまった。追い付かれるわけにはいかない。少しでも遠くに逃げなければ…。

 

結局車が追いかけてくることはなかった。こんなことならひとつふたつ服の中に入れてかっぱらって来ればよかったな、と後悔した。だけどあれは何だったんだろう。以下、俺の推測。

 

①おじさんがトイレでアダルトグッズを売っていた

②おじさんがアダルトグッズをみた人の反応を楽しむためのイタズラだった

③おじさんは関係なくて、善意の誰かの置き土産

 

ちなみにアダルトグッズはみんな新品でした。人通りが少ない市民の森で商売になるんだろうか。どう思います?

『万引き家族』みたよ

ども~。

 

先日実写版BLEACHを観に映画館に行ったのに、受付でチケット買うときになって突然気が変わって『万引き家族』にしました。

 

(※以降ネタバレあります)

 

まあ、出てくる役者出てくる役者、みんな上手い。びっくりした。その辺にいるオヤジとか婆さんとかオバチャンみたいな感じで、役者じゃないみたいだった。

 

万引き家族』ってタイトルから想像できるように万引きしてる家族の話なんだけど、万引きだけじゃなくて他にもいろんな事やってるんだ、万引き家族は。たくさんエピソードがあって、そのどれもが「なんかこういう話ニュースでみたな」という感じで、万引き家族はそういうのを一手に引き受けてる家族。

 

個人的にグッと来たのはリリー・フランキーとショウタが『スイミー』の話するとこ。』ショウタの『スイミー』の話にリリー・フランキーが付いていけなくて、ショウタもそれがわかって、すっと話を変えるところが、悲しい。

あとリリー・フランキーが「俺に教えられるの万引きだけだったから…」っていう場面、悲しい。

 

終盤、家族のことが表沙汰になってニュース番組で報道されるんだけど、それが「なんかこういう話ニュースでみたな」まんま。これまでずっと見てきて、それなりに思い入れがある家族がそんな言葉で表現されてしまうのか、という落胆。きっと普段聞き流してるニュースにもそういうとこあるんだろうな。

 

映画を観たあとで、是枝監督の小説版をパラパラ読むと映画と違いがあって面白かった。最後に女の子が遠くを見るリンや、バスの窓から外をみるショウタのシーンにそれぞれの気持ちが書き込まれてたりして。

リンとショウタこれからがんばってほしい。がんばってほしいというか、大人がやらないといけないことがたくさんあるわけだけど。お前もがんばれよという感じだけど。

 

最後のショウタとの別れ、安藤サクラが『スタンドバイミー』で主人公に「町を出ろ」っていう男の子と重なるような気もして。だけどショウタは自分の意思で全部決めたんだよな。『スタンドバイミー』の主人公とは違うか。

 

いずれにしろ万引きだけじゃなくて、いろんなしんどいことを詰め込まれた家族の映画で、きっと多くの人が経験したことがあるちょっと嫌なことを、ギューッと凝縮しためちゃめちゃ濃い原液みたい。誰でもどこかしら引っかかるところがあると思う。そういう意味で国を越えて評価されてるのは納得した。

 

一部で言われてるように「日本が万引きを許容していると思われる」というような内容ではまったくなくて、むしろ逆に万引きに象徴される「許されないこと」が取り締まられる社会で、その隙間にしか生きることができなかった人の話だった。見終わってからも悶々と考えるタイプの映画。

 

あと松岡茉優かわいかった~。

うぉー!スカイリムはじめたぜ!

※ネタバレというほどでもないけど(はじめたばかりでバラすほどのネタはない)、ゲーム内容への言及があるので「一切情報を入れたくない」という方はご注意ください。

 

わけもわからないままはじめました。

洋ゲーってほとんどプレイしたことがなくて(スマホアプリは除いて)、ハード面でも環境が整っていないのであまり関心をもってなかったんですが、スカイリムがSwitchにやって来たんです。洋ゲー大作が任天堂ハードでできるなんて!買った。

私の中でスカイリムとダークソウルとアサシン・クリードはほぼ同じもので見分けがつかない。あれでしょ、劇画調の3Dモデルが敵をブスッとやる感じでしょう。という程度の認識。

はじめてみると日本のゲームと勝手が違うところがあって戸惑うこともが多いです。
まず確認がないんです。キャラメイクする、名前を決める、完了を押す。すると本当に完了して即、話がはじまる。「本当にこの名前でいいですか?」とか一切なし。テキパキしてるぜ。名前打ち間違えてないよな…。

キャラメイクもね、ちょっとビックリしました。
話は主人公が馬車で処刑場に連行されている場面から始まります。雰囲気は北欧っぽくて『ヴィンランド・サガ』みたいな感じ。一人称視点。向かいに座ってるクールぶった厳ついオッサンがベチャクチャ話しかけてくるんですが、そのうち処刑人に「お前は誰だ」と聞かれてキャラメイクがはじまる。で、そこで選べる顔がおかしい。

いきなり猫の顔が選べるんだ。グイン・サーガみたいな。いや、いいんですよ、猫顔。いいんですけど、これまでずっと普通の人間しかでてなかったもんだからどういう世界観がわからなくなるんですよね。はじめから仮面ライダーだとわかってたら怪人の存在は受け入れられるけど、水戸黄門にいきなりイカデビルでてきたらビックリするやん。
選べるキャラは猫だけじゃなくてエルフとかゴブリンみたいなのとか、いろいろ。向かいのオッサン普通に話しかけてきたけど、猫顔ってこの世界だとありふれてるんかねえ…

それぞれの顔(というか種族)には特徴があるらしくていろいろ書いてある。ただスカイリムの予備知識ゼロだから何が有利になるのかさっぱりわからない。博打。現代人に近い『ヴィンランド・サガ』に出てきそうなキャラは「叫び声で敵を殺す」と書いていて「ジャイアンのこと???」てなる。どんな世界なんだ…。
とりあえず遠距離攻撃が得意らしいなんとかエルフを選んで(エルフだけ3種ありました)、顔をつくりました。顎と額がやたら長いのを調整して、ホモ・サピエンスになるべく近づくようにしました。(ブログ用に写真撮っておけばよかったな…)

余談ですけど、スクショをSwitchからスマホに送るのめんどいですよね。Switchから一旦サーバーに上げてニンテンドーアプリからスマホに落とせるようにならんかな…。以前に3DSのゲーム日記書いてるとき、画像のスマホへの移動がストレスだった。

で、ようやく姿が決まったところで冒険開始なんだけど、久しぶりに長文作ったら疲れたのでここまで。洋ゲーやってる感あってうれしかったとこがもっとあるんだけど、あんまりかけなかったな。(気が向いたら)次回書きます。

スマホ版どうぶつの森について思うこと

おーーいみんなーー!

どうぶつの森が出るぞーー!

 

ついにリリースされるのか!スマホどうぶつの森!突然の発表にひっくり返って「あ゛ーーーー!」と叫んでしまいました。

 以前スマホ版を開発中と聞いたとき、これはまずいと思ったんですよね。絶対のめり込んじゃうから。いよいよ来るのか…。

 

はじめてどうぶつの森をプレイしたのは3DSの「とびだせ」。ちょうど発売された時期に仕事してなかったので暇潰しにはじめたんですけど、村の生活が楽しくて楽しくてはまりこんでしまいました。

仕事してないから人との繋がりも希薄で目標もなく生きていた(就活しろ)んですが、どうぶつの森にはみんなみんなあるんです!村長という仕事、村の住人たちとの交流、村の発展と自宅の改修という目標。「おれはわさび村(村の名前)で生きている」、そう思ってました。

 で、今回そのどうぶつの森が、いつでもどこでもさわれるスマホでリリースされるとのこと。おれは二重生活に耐えられるだろうか…。 自己分裂とか起こしてしまわないだろうか…。今回は前回と環境が違うし、大丈夫かな。

 

どんなゲームになるんでしょうね。アバターが人でなくてどうぶつってこともありえるな。そんでコグマ型で集まってわちゃわちゃしたりして。

それと料金も気になる。買いきり型かな、それとも課金ガチャかな。いろいろと考えてしまいます。自分の村もらえるといいな…。

 

と、いうわけで


〈こんなスマホどうぶつの森は嫌だ!〉

第一位 住人がガチャ

ガチャを回すとですね、汽車がガタンガタンと村にやって来て駅に住人が降り立つんです。住人がレアリティでランク付けされててですね、「SSR ミント」とかなんとかいってキラキラするわけです。豪華な寝台列車が確定演出。


第二位 実際に歩いて移動

広大なエリアに村が点在していて、隣村に行くときは2キロくらい歩くんです(GPSで測定)。エリア内には貴重な果物がなる木があって、10キロくらい歩いてたどり着く。自分の村に帰るときは20キロくらい歩いてください。森の生活を実体験しよう!


第三位 公共工事はリアルマネー

どうぶつの森では自分の村を発展させるために橋を架けたり、交番を建てたりするんですが、その費用はプレイヤーが実費負担。何てったって公共工事ですから!「お上」がなんとかしてくれるんです。世の中そういうもんです。金を拠出しなければ村はいつまでも発展しません!

 
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(わが愛しのジャスミン)

 

いやーー楽しみだなあ!楽しみだなあ!

労基がやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!

Twitter では愚痴をぶちまけているので、このブログでは楽しいことを書こうという気持ちでやっています。多少上がり下がりがあっても結果的にプラスの話になればいいや、みたいな。

今回はうちの職場の話に労基が査察にきた話をします。(査察という表現であってる?)

労基の人がある日抜き打ちでやってきました。私はその時会社にいなかったのであとから聞いたのですが、労基の人はタイムカードをチェックしたり、社員に「会社のルールはありますか?」と聞いたりしたそうです。社長が留守にしていたのでその日はそのまま帰って、後日また来るとのこと。

労基の人が帰ったあと、社内では「誰かが通報したのだろうか」とか「この辺りを抜き打ちでまわってるのかな」とか噂しあいました。

「お前が通報したんじゃないのか?」と真っ先に訊かれたのは私です。私は日頃の行いが悪いというか、自分でいうのもなんですが横柄な性格で「残業代がでないのに残業なんかしたくない!」とか言っていました。(弊社ではサビ残が常態化しています) 結構反抗的な社員です。私に訊いた人は笑いながら、半ば冗談、半ば本気で訊いたのでしょう。そりゃまあ、疑うのは当然です。

その通りです。大正解。私です。パチパチパチ。三ヶ月ほど前に厚労省のホームページの通報フォームから送信しておいたんですよね。サービス残業が常態化していること、タイムカードはキチンとつけてるから給与明細と比較すれば残業代を払っていないとわかるということ、変形労働制を悪用していること、などなど。プライベートのスマホを仕事で使っているのに支払いは社員持ちであることは書き忘れてしまいました。

その通報でやってきた可能性は大いにありますね、えぇ。せっかくだから労基にビシッと言ってもらって、残業代がでるようになるといいな。そしたらお金が貯まるな。新しい靴とか買いたいな。結果が出るのがめちゃくちゃ楽しみです。

私は匿名で通報しましたが、本当に来てくれますよ。サビ残などで悩んでいる方は、厚労省のホームページに通報してみてはいかがでしょうか。なるべく具体的に、どこを調べたら不正がわかるのか、調査する人の助けになるように書いておくのがいいみたいです。

たっのしみ~~!!

金曜日の夜、ちょっとドキドキしたこと

昨晩仕事からの帰り道、バスの中でポケモンゴーを起動しました。自宅近くのジムを確認すると、敵のジムになっていて、カビゴンが一匹でいました。

これはチャンス、と思いました。これまでそのジムは味方のジムで、前を通るたびに餌をやっていたのですが、味方のジムであるからこそ、自分のポケモンを置けずにいたのです。

自分のポケモンを置くために餌やりをしないというのは信義にもとる気がして、できる限り餌をやることにしていました。だけど今は敵のジム。自分のポケモンを置くために戦うことに決めました。私が取り返しておけば、また友軍がポケモンを再配置できます。

ですが、です。よくよく見るとそのカビゴンが配置されたのは0分前でした。置いたばかりです。ということはつまり、カビゴンを置いたトレーナーが近くにいる可能性が高い。私はスマホをそっとポケットにしまいました。降りるバス停はまだ先ですが、ポケモントレーナーであることを悟られないように念をいれました。障子にメアリーですから。

バス停につくと、私は自然な動作でバスをおりました。ポケモントレーナーであることを微塵も感じさせない動きであったと思います。バス停から件のジムまで、時間をかけてゆっくりと歩きました。あたりに街灯は少なく、闇に紛れて目立たずに行動できました。誰ともすれ違わずにジムにつきました。ジムのまわりには、私しかいません。ですがやはり念を入れてジムの裏手にある細い路地に入りました。その路地はジムを背中に、左右をブロック塀に囲まれ、前方は崖になっています。表通りからは死角になっている場所です。私は更にその路地をすすんで、ジムがギリギリ範囲円の中に入るところで戦うことにしました。

敵はカビゴン一匹。それほど手こずる相手ではないはずです。かみつくとハイドロポンプを覚えたギャラドスで難なく勝つことができました。傷付いたギャラドスを回復して、再戦。三回勝つことができればジムを自分のものにできます。二回目も順調に勝って三戦目、と思ったときに異変に気づきました。カビゴンのほかに新たなポケモンが配置されていたのです。赤いギャラドスでした。カビゴンに与えたはずのダメージも回復していました。

近くに誰かがいる。間違いありません。私が自分のギャラドスを手当てしていた隙に、カビゴンを回復させ、赤いギャラドスを置いたのです。私はあたりを見回しました。ですがその路地には私以外、誰もいませんでした。狭い路地ですから隠れることはできません。崖の上のアパートには明かりのついた部屋がいくつかありましたが、そのアパートからジムにアクセスすることは距離的に不可能なはずです。

かすかに車のエンジンの音が聞こえました。表通りの方からでした。どうやらジムの近くに停車しているようです。直感的にその車に乗っているのが敵のポケモントレーナーだと思いました。とっさに逃げることを考えました。ここは家の近所、もし見つかると名前と住処がばれるかもしれません。「よくもわしのギャラドスをめたくそにやっつけてくれたのォ!オオン?!」みたいに家にこられたら迷惑です。

迷いましたが戦いを続行することにしました。表通りからはこちらは見えていないはずです。それにもし仮に私のいる場所がばれたとして、自分のポケモンを倒されたことに激高したトレーナーが車から躍り出てこちらに狙いを定めて殴り込んできても、私のいる場所に到着するまで10秒はかかるはずです。逃げ切れる、と思いました。ここはマイホームタウン。ありとあらゆる道に精通しています。道とも言えないような家と家のあいだの隙間、溝のなかを通り抜ける猫の道。逃げ切れると確信しました。念のため路地に入っていてよかった。何も考えずに表通りにいたら、敵のポケモントレーナーと鉢合わせしていました。

ですがあまり時間はかけるわけにはいきません。やると決めたら即座に行動。弱っているカビゴンには真田(ハッサム)、赤いギャラドスにはイブき吾郎(サンダース)をぶつけました。ちょちょいのパッパでCPを減らし、ついにはジムを破ることに成功しました。真田たちの回復も後回しにして、ジムにこはく(カイリュー)を配置しました。

よろしく頼む、今は午後10時だ、朝まで持ちこたえるんだこはく、きっと50コインもって帰ってくるんだぞ。そんなことを考えていたおれには隙ができていたんでしょう。角の向こうに何かが近付いていたことに気がつきませんでした。突然「カササササササッ!!」という音がしました。油断していたから本当にビックリしました。瞬間、私は全力で走りました。表通りと反対の方向へ、直線を走り抜け、角をいくつも曲がり、坂を駆け上がりました。途中何度か振り返ったけれど、人影は見えませんでした。ビックリした。本当にビックリした。あれはなんだったんだろう。