森の中の公衆便所に陳列されていたもの

 

小学生の頃、とにかく歩くのが好きだった。仲がよかった友人と一緒に(時には友人が飼っていたた柴犬も)、近くの山を歩き回っていた。舗装された道だったり、獣道だったり。住んでた場所が山だらけだったので歩く場所には困らなかった。

 

ある時、友人といっしょに市民の森を歩いた。そこは普段はあまり立ち入らない道で、割と長いコースだった。車が一台くらい通れるくらいの幅に舗装されていて、その脇は木が繁っていた。人通りはほとんどなく、たまに車が通過するくらいだった。誰もいない長い道というのは小学生にしてみれば冒険みたいなもの。水筒やエアガンを装備してでかけた。

 

そのコースは途中に野犬のでる場所があった。三匹くらいの群れが吠えかけてきて、彼らの縄張りを出るまで森の中をついてきた。たまに道路の上にいることもあっけど、運がいいことに噛まれたことはない。ちなみに友人の柴犬は極度のビビりだったのでまったく役に立たなかった。

 

ここからが本題。その市民の森コースは、途中にいくつかのトイレが設置されていた。そのコースを歩く人が草むらにしゃがまなくていいように。ブロック塀とコンクリートの粗末な造りだけど、ないよりましだ。あるトイレの前を通りかかると車がとまっていた。人通りが少ない道とはいえ運転に疲れた人が休憩することはあるだろう。

 

俺は小便がしたかったのでそのトイレに入った。すぐに何かおかしいことに気付いた。小便器の上の荷物置きや、大便器のタンクの上にアダルトグッズが並べられていた。エロ本(実写)だったり、オナホールだったり。俺は大喜びで外にいる友人を呼びに行き、中を確認してきた友人とキャアキャア言いながら盛り上がった。小学生だったのでこれほど高次のアダルトグッズに接する機会はなかった。

 

だけど、だ。よく考えると市民の森のトイレに高次アダルトグッズが陳列されているこの状況は何かおかしい。そこではじめて俺たちは恐ろしさを感じた。楽しい気分は吹き飛んだ。何かおかしな事態が持ち上がっているのではないか…。これはヤバい大人の世界だと思った。俺と友達はトイレから走って逃げた。

 

きっとトイレの前にとめてあった車だ。運転席におじさんが座っていた。あいつの仕業に違いない。俺たちはうっかりアダルトグッズの闇取引の現場に足を踏み入れてしまったんだ。見てしまった。追い付かれるわけにはいかない。少しでも遠くに逃げなければ…。

 

結局車が追いかけてくることはなかった。こんなことならひとつふたつ服の中に入れてかっぱらって来ればよかったな、と後悔した。だけどあれは何だったんだろう。以下、俺の推測。

 

①おじさんがトイレでアダルトグッズを売っていた

②おじさんがアダルトグッズをみた人の反応を楽しむためのイタズラだった

③おじさんは関係なくて、善意の誰かの置き土産

 

ちなみにアダルトグッズはみんな新品でした。人通りが少ない市民の森で商売になるんだろうか。どう思います?