昼ごはんを食べれない
昼ごはんを食べれない。この街にはたくさん食事をとれるところがあるはずだけど、昼ごはんにありつけない。
そもそもおれの「食事処レパートリー」が貧弱すぎる。思いつくままにならべると、
ラーメン屋A、ラーメン屋B、中華屋、うどん屋、カレー屋、ココイチ
計六店。 これだけ。
六つもあればいいのかもしれない。だけどその中から条件をつけて選ぶとなると、選択肢はさらに狭まることになる。
まず休日の昼ごはんにココイチは選ばない。休日感がない。ココイチは平日会社帰りに合う。牛丼同様、労働者の食事だ。一日働いたあとにザクッと食べるときにこそココイチだ。うどん屋もそうだ。中華屋も平日によく行っているから外す。
残るはラーメン屋A、ラーメン屋B、カレー屋。しかし昼間からラーメンはない。おれの中ではない。ラーメンは夜に属する。だったらカレー屋しかない。カレーも夜って気がするが仕方ない。もうカレー屋しかない。おれはカレー屋に向かった。消去法によって選ばれた店だが、積極的に望んだわけではないが、おれは昼ごはんを食べなければならない。
カレー屋に入ろうとすると、おれの前を歩いていたカップルがカレー屋に入った。
もうだめ。なんかだめ。カレー屋もだめになった。
「食事処レパートリー」を使いきってしまった。この街にある店をひとつひとつ思い浮かべてみたけれど、近くに昼ごはんを食べれる店はなかった。いや、店はある。だけどそこは、おれが入れる店ではない。途方にくれた。おれは昼ごはんを食べれない。